今回は現時点の自分の考えをまとめた記事です。

AIがこれだけ進化しているのに、今さら人間が勉強する意味なんてあるの?
先日、中学生からこんな質問をされました。
私もふとした瞬間、そんな疑問が頭をよぎることがあります。
情報は検索すればすぐに出てくるし、チャットGPTのようなAIに聞けば、たいていのことは答えてくれる。わざわざ時間をかけて覚えたり、考えたりしなくてもよい時代が、確かに到来しつつあるような気がします。
しかし、それでも私は3つの理由から「間違いなく勉強には意味がある」と考えています。
理由① 知っているからこそ、疑問が生まれる
まず一つ目は、「少しでも知っていることが、思考の出発点になる」ということです。
何かについて「知っている」というだけで、それが対話の種になります。ただ受け売りの知識ではなく、自分の言葉で話せるようになると、相手と本当の意味での議論ができるようになります。
そして、自分なりに考えるためには、ある程度の基礎知識が必要です。例えば、数学の定理を理解していなければ、「なぜそうなるのか?」という問いそのものが生まれません。歴史の流れを知らなければ、今起きている社会現象に対して疑問を抱くことも難しいでしょう。
つまり、知識というのは「疑問を持つための土壌」なのです。AIにすべてを委ねてしまうと、この土壌が育ちません。何かを疑い、深掘りし、考えるという人間らしい営みは、知識の蓄積があってこそ可能になります。
理由② 歴史を知ることで、世界との接点が生まれる
二つ目に強く感じるのは、「歴史を知っていることの価値」です。
歴史とは単なる年号や出来事の暗記ではなく、「なぜ人々はそう動いたのか」「何が背景にあったのか」という人間理解そのものです。そして、その理解があると、世界の他者と向き合う姿勢が変わります。
たとえば、ある国の文化や政治体制がなぜ今の形になったのか。その背後にある植民地支配、戦争、思想運動などの文脈を知っていれば、表面的なニュースの奥にある「人間のドラマ」が見えてくる。結果として、国際的な対話の中でも、一歩深い理解ができるようになります。
特にこれからの時代、多様な背景を持つ人たちと協働する機会がますます増えていくでしょう。そんなとき、自分の国の歴史を語れたり、相手の歴史を理解していたりすることが、信頼の土台になります。教育という営みが、遠回りのようでいて、国境を越える架け橋になるのです。
理由③ パイロットは覚えることがたくさん。それすらAIに・・・
パイロットは皆さんのイメージの通り、覚えることが本当にたくさんあります。そうやって大量の暗記をしていると時々考えてしまいます。「調べればわかるじゃん。。。」と。
でももし、本来暗記しなければいけない知識を上空で逐一調べていたらどうなるでしょうか?特に緊急時は想像に容易いですね。なすすべなく、すぐに墜落です笑
もちろん知識を暗記しておくだけでは足りず、すぐに使える知識として「理解」しておく必要があります。操縦訓練で苦労する学生の特徴としては、知識は暗記しているけれども、どうやって使うか理解できていない状態です。数学で例えるならば、公式は暗記したけれども、問題演習はしていない状態でしょうか。
ただ、我々パイロット(訓練生)は何冊もある操縦の教科書を完璧に暗記しているわけではないんです。操縦中はニーボードといわれるいわゆるカンニングペーパー見たいな紙を膝の上にのせて、いざというときは必要な知識を参照できるようにしています。どこに必要な知識があるかを覚えています。
まとめ AIの時代だからこそ、人間にしかできない営みを
AIの発展は素晴らしいことであり、それ自体を否定するつもりはまったくありません。しかし、AIはあくまで補助的なツールです。それをどう使い、何を問い、どう判断するかは、やはり人間次第です。
だからこそ、「なぜそれが必要なのか」「どうしてそうなっているのか」といった根本的な問いを立てられる力——それが、今後ますます求められていくと思います。そして、その力は、やはり日々の勉強の中で育まれるものです。
勉強とは、単に知識を詰め込む行為ではなく、自分自身の視点を養い、他者との接点を見出し、よりよく生きるための土台を築く営みです。AIが台頭するこの時代だからこそ、教育の価値はむしろ高まっているのではないでしょうか。
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